以前のイベントで、出鉄の黒幕Pが言うにゃ、同じ真剣少女が複数存在するのは、メタな話ではなくて、世界観に合致している話なんだとか。
でも、当の真剣少女らはそのことを知覚していない、んだっけ?
どなたかまとめてはったような記憶があるけど見つけらんない。
閑話休題。そんな中で、当の真剣少女が自分の妖刀少女と遭遇したらどんなんかな、と、断片的にに書いてみました。
よければ、どぞー。
登場人物
池田正宗ながよ
石田正宗きりこ
中務正宗ただか
気配を察し、左足をひいて、半身になって身構えた。・・・いや違う。引いたのではない。思わず後ずさったのだ。
ながよは唇を噛み、その引いた左足を踏みしめ直す。
一つ深く呼吸をし、池田正宗を抜いた。
「そこにいるのは誰?」
ながよが声を向けた。
こころなしか、そのナニかが隠れている木の周囲が澱みはじめたように見えた。視界が歪んだように思われるような知覚。
その澱みがぬるりと滲みでるように、それは姿を現した。
息を呑んだ。
そこにいるのは、"池田正宗ながよ"そのものではないか。
その、"奥から現れたながよ"は右足を前に送り、同じく抜刀して構えをとる。
ともに正眼、ともに右半身、構えあったまま、左右違えどまるで鏡を見るよう。
だが明らかに違う。奥のながよから放射される禍々しいまでの赤いオーラ。
あの色は見たことがある。あれは、蝕魂鋼の色だ。
これが妖刀少女なのか。
これが、あの。
しかも、それは、わたし?
ながよは、表情に出すことをなんとかこらえる。
いずれからともなく、池田正宗の剣尖があがる。
共に右八双。
鏡合わせは続く。
その時、奥のながよ・・・"妖刀ながよ"の唇が動くのが見えた。
「・・・を煮るに・・・がらを・・・」
ながよ・・・真剣ながよの刀身がぴくりと震えた。
鉄面皮を貫くことができなかった。
妖刀ながよが笑み崩れた。
なんと艶やかな、そして、なぜだろうか、なんと哀切に満ちた。
妖刀ながよのつぶやきが続く。
「・・・釜中にあって泣く」
真剣ながよの構えのぶれがひどくなっていく。刀身がぶるぶると震えている。
その表情は、驚きと怯えがないまぜになっている。
八双の構えが崩れた。
妖刀ながよが、間合いをつめる。
だが、"真剣ながよ"の構えは戻らない。
更に間合いがつまる。
真剣ながよは、わずかに身じろぐ。
袈裟切りに妖刀の剣尖が襲いかかった。
キィィィィンと澄んだ音を発し、すんでのところ自身の池田正宗で受けたものの、刀身をはじきとばされ、倒れこんで腰を痛打する。
妖刀ながよが、大上段に振りかぶる。
丸腰となった真剣ながよは、ただただその刃を見上げた。
「不落砦!」
そのとき、右の林間から、放たれた数珠玉の光が妖刀ながよを打った。
妖刀ながよは退り、間合いを取る。
その間に、中務正宗ただかが割って入った。
「ながよ殿!無事か!」
後ろから押っ取り刀で石田正宗きりこも駆け付けた。
二人して、ながよを庇い立ちはだかる。
二人とも驚きと戸惑いを隠せず、視線を交わす。
妖刀に出会うのは初めてであった。そして、その妖刀と同じ刀に縁を結んだ真剣少女は自分たちの後ろで倒れているのだ。
真剣と妖刀は同時に存在できるのか?
仕掛けてこないのを見、妖刀が光を放った。
「擬鳳蝶蛾」
揚羽の羽ばたきが鱗粉とともに、吹きつけられる。
鱗粉の嵐に視界を奪われ、再び目を上げたときには、すでに妖刀ながよの姿はなかった。
「アレは退いたのか?」
「撤退したようだね。まぁボクに恐れをなしたのだろう」
きりこの軽口に応じることなく、ただかは後ろを向いてながよを助け起こすべく、手を差し出す。きりこは肩をすくめている。
「怪我はないか?ながよ殿」
呆と表情を向けていたながよは、ピクリと震えると目を伏せ、「えぇ」と応じた。
ただかの手を取って立ち上がると、衣服についた土を払う。
「アレは・・・妖刀だよね?・・・ながよ君の。」
三間先の地面に突き刺さっていた池田正宗を拾い、柄を返して渡しながらきりこが聞いた。
ながよは、目を伏せたまま、口を開いた。その唇が一篇の詩をつむぐ。
豆を煮るに豆がらを焚く
豆は釜中にありて泣く
本是れ同根に生ぜしに
相い煮ることなんぞ甚だ急なる
「それは、"七歩の詩"?」
「ここにいるのは私。あそこにいたのも私。」
ながよは、それ以上、口を開かなかった。
重い沈黙が辺りを包んでいった。
以下、通り一遍な断り書き。
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以上、通り一遍な断り書き。
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